<p> G.W.ライプニッツ(1646-1716)は自らのことを「予定調和の説の著者」と呼びました。彼の足元にも及びませんが(と書きつつ、足元のくるぶしのカサカサしたあたりにはたどり着いていると信じたいですが)、私もライプニッツの精神を受け継ぎ、「調和の哲学者」ないし「ととのいの哲学者」になりたいと思っています。より具体的には、「調和」あるいは「ととのう」という概念の歴史、理論、応用について包括的に研究していきたいと思っています。</p> <p> この大きな構想の実現に向けて、現在のところ実際に遂行している研究は三つあります。</p> <p> 一つ目は、ライプニッツを軸にした医学・生物学・哲学思想の研究です。特に最近は、ライプニッツの「予定調和」に焦点を当て、歴史的観点・体系的観点から包括的に研究を行なっており、著書として出版することを目指しています。</p> <p> 二つ目は、「総合哲学」というあり方の研究です。「調和」という概念を包括的に研究するために、様々な学問領域においてすでに構築された知識を(それらの妥当性を検討しつつ)組み合わせることによって新たな知識を生み出す結合法的、総合的な手法をとりたいと思っています。しかし、そのように「組み合わせる」やり方、つまり、概念の「総合」や「統合」のあり方は決して自明ではありません。そのために、方法を確立するための作業や、個人やグループによる総合的(学際的)な成果に対する事例分析を行なっています。その一環として、さまざまな分野の専門家とさまざまな共同研究を行い、自身やその共同研究のグループを対象として観察し、専門的知見を「総合」や「統合」する明示的なプロセス(既存の学際的研究の方法論よりも細分化されたプロセス)を構築するための手がかりを探しています。</p> <p> 三つ目は、「調和」の萌芽的かつ探索的な研究です。「調和」という概念は、歴史的にも、理論的にも、応用的にもあまりにも広い範囲に及ぶ概念であるため、何をどのように研究するのか、ということ自体が課題となります。現在は、さまざまな学術分野において生み出された知見や方法を探索的にインプットしている段階です。特に、数学における、数学による「調和」に関心があり、調和解析を軸とする解析学の学習を進めています。というのも、古来より世界の「調和」が語られる際に、数学、音楽論、天体論は重要な要素をなしており、数学における、数学による研究が根幹の一つをなすと考えるからです。将来的には哲学と数学双方の専門的研究者として、「調和」の研究に取り組めればと考えています。</p> <p>※オンライン公開されている論文には、以下の論文名をクリックしていただけると、リポジトリのリンクやDOIからアクセスできます。</p> |